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評壇

一週年紀念号の刊行に際して

 一週年の紀念号の発刊……。

 よそから観れば尋常茶飯事かも知れませんが、御同様心霊問題に従事して居るわれわれから観ればなかなか有意義の事柄たるを失いません。一般世間からは冷眼視せられ、一部の学者、政治家、教育家、宗教家等からは異端視せられ、ほとんど有るか無きかの取扱いを受けつつあった時代に、素面素小手で着手した心霊専門の雑誌の発行でありますから、その前途の容易ならざる事は最初から大てい相場がきまって居ります。

 困難は独り人事上のみならず、一昨年は天変地異の襲来さえも伴ってわれわれの仕事はその出鼻を挫かれ、本誌の前身たる『心霊研究』は文字通り三号雑誌で終焉を告げ、斯学の前途はまことに暗澹たるものがありました。そんな状態の下に本誌が大阪で復活したのは実に一の奇跡ともいうべきものでした。

 復活というと大変景気よく聞えますが、実は主に植田輝文舘主の犠牲的行動により辛くも発刊を為し得たというにとどまります。ホンの名ばかりの仮事務所が輝文舘内の一隅に設けられ、編輯へんしゅうは神戸でると言った塩梅で、お話しにならぬほどのみじめさであったのであります。普通ならばうの昔につぶれるべくしてかもつぶれず、雑誌の発行が遅れる位のところで月又月と兎も角も難局を切りぬけて来たというのは、一方で心細い限りであったと同時に他方では又頗る愉快なる点でもありました。

 そうする中に機運は徐々として動いて行きました。稀代な霊覚者後藤道明氏が一二度東京からやって来る、神懸りをやる葛岡芳子氏が岡山から馳せ参ずる。神戸の飛田氏がますます神仙界との交渉の歩をすすめる、霊光洞の関氏が九死の中に一生を得て一段とその能力を高める、土田氏が現われる、梶山氏が出る、福井氏が出る、高野氏が出る……。とうとう大阪在住の熱心家の協力によって心霊科学研究会の関西実験部ともいうべき『心霊倶楽部』が大阪の真中心に組織さるるに及びまして、日本国にもそろそろ心霊運動の起るべき曙光がほの見えて来ました。

 一体宇宙間には摩詞不思議の働きが常に存在し、人間がこれを認めると認めぬとに係らず永劫不変の活動をつづけつつあります。万有の生死往来、日月星辰の循環運行、何一つとして自然の力の偉大と微妙とを物語らぬものはありませぬ。これが本来の大心霊現象というものでありましょう。所が、人間は余りに自然現象に慣れ過ぎ、又余りに自己の城壁を築き過ぎる結果、ともすれば自分が宇宙の大法則によりて司配しはいさるる所の一微分子であることを忘れ、勝手な熱を吐きたがる傾向があります。個人主義的唯物説などはその好標本であります。無論それにも多少の真理はありますが、それですべてを律せんとする時に大変な無理が出来、たちまち社会人生の乱離を醸成することになります。十九世紀末から昨今に到る世界の現状を見ればよく判ることで、無論日本国も決してその選には漏れないのであります。

 すっかり行詰って局面の転換を要する時期にきまりきっていつも出現するのが変態的非常心霊現象――所謂いわゆる神がかり現象であるようです私達はこれもって迷える人類の迷夢を覚ますべく止むことを得ずして行う所の霊界の慈悲の方便と考えます。『汝等はこれでもまだ分らぬかこれでもまだ勝手な熱を吐くか』。――ドーもそういう黙示と考えらるるのであります。この黙示は日本よりも欧米の方が早く来たようです。英国に『心霊研究会』が初めて組織されたのは今より四十三年前でありましたが、日本では今まで組織されてもすぐにつぶれ、つぶれなくても一向勢力がない。それはほかでもない日本に一世の耳目を聳動しゅうどう万人を首肯しゅこうせしむる丈の有力的確な心霊現象が起らなかっためであります。何事も時期の問題で、決して日本人の罪にのみ帰することはきないと存じます。

 日本にもいよいよ局面転換の時期が来たようです最新最高の教育を受け尋常以上に明晰なる頭脳の所有者たる神戸の飛田信氏が従来存在の有無を疑われたる神仙界に出入し直接某々神仙の指導を受けつつある一事実だけを観ても思半ばに過ぐるものがあろうと存じます。恐らく本年あたりからは追々この種の現象が殖えるばかりでしょう。世間の方々は心霊現象といえば、すぐ西洋式の卓子浮揚現象とか、幽霊写真とかを連想されるようでありますが、私達は日本には日本特有のモ少し意義深長なる心霊現象が起らねばならぬと確信するものであります

 兎も角も本誌はかかる時代に一週年の紀念号を発刊することになったのです。私達は微々たる創業時代に多大の声援を賜わった会員読者諸氏の好意を深謝すると同時に、今後ますますこの意義重大なる事業の先頭に立ちて活動さるることを切望して止まぬものであります。


底本: 雑誌 「心霊界第二巻第二・三号合併」 

発行: 1924(大正14)年2月11日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年2月13日

※ 公開:新かな版     2007年4月5日


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