心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊界・第一巻

心霊倶楽部の設立に就きて

発起人


 今回大阪に『心霊倶楽部』が設立されたに就きまして、ここその目的の那辺なべに存在するかを率直に開陳し大方先覚の御賛同に与かりいと存じます。真面目な性質の事業は皆そうでありますが私どもがこれを創設するに当りましてもドーしても止むに止まれぬ精神的慾求と言ったようなものに促進され万難を排除してこれが組織を決行した次第であります。周囲の都合上場所を大阪に選定致しましたが無論これは一大阪のみを目標の仕事ではございません。これを小さく見れば日本国の問題これを大きく見れば世界各国共通の大問題所謂いわゆる心霊運動ひとつあらわれなのであります

 今更いまさら申上ぐる迄もありませぬが、十九世紀から現今に至る時代は物質科学の大発達を遂げた時代でありまして、ヒネクレ者などが何と悪口を申しましても、世界の人類はその恩沢に浴して居るのであります。物質科学が元素から原子、原子から電子と次第に奥へ奥へと突き込んで、最近遂に水銀から金を採り、白金を採り得る迄に進んだことは真に刮目かつもくすべき大進歩と申さねばなりませぬ。ここに至りて物質科学は理論上からも実験上からもほとんど造化の奥妙をきわめ、ホンの今一歩で健全なる宇宙観人生観の樹立を可能ならしめる所まで到達して居るとうべきであります。しそれ物質科学の進歩が人生の実用方面、例えば交通機関、運輸機関そのほかに及ぼせる効果のいかに偉大なるかは何誰どなたも御承知の事柄でありますからここ贅言ぜいげんを費すの必要はありますまい。

 ひるがえって十九世紀から二十世紀にかけての世界の精神科学方面の状況を考察しますと、物質科学の進歩に比してこれは又何という貧弱さでございましょう。名は精神科学と申しましても実は物質科学の奴隷であり、附属物であります。何となればその大部分はことごとく唯物説の上に立脚して居るからであります。唯物説の上に立脚した心霊学は要するに物質科学の畸形児であって決してそれ自身独立独歩のできるシロモノではないのであります精神科学は霊魂の存在を認めた時に初めて独立独歩のきる立派な科学であります

 欧米の学界の一部で初めて物質に当てはままる所の規則で到底説明のきない不可思議現象の存在に着眼したのはほぼ十九世紀の中葉でありました。最初は随分たよりのない、アヤフヤなものでありましたが、今より約四十余年の昔、一八八二年をもって英国に『心霊研究会』が組織せられ、当代一流の知名の科学者が一般の非難疑惑を排して敢然としてこれが研究調査に従事するに及び、心霊研究はここに初めて一の立脚地を得ました。爾来じらい心霊研究は仏、伊、独、米等の諸国にも波及し、今日迄には最早もはや動かすべからざる学界の一勢力となっては居ますが、しかし一方ほぼ完成の域に近い物質科学の盛観に比較すれば甚しく幼稚で不整理で浅薄で大人と小児とを併べたような感じが致します心霊の研究は種子は蒔かれ二タ葉は生えたがまだ花を開き実を結ぶ所まで達して居ないその完成は主として今後の努力に待つ外はない。この感は就中日本国においことに深い。日本の心霊研究はまだ二タ葉さえ生えたか生えぬかというあわれな状態に在ります。

 私どもが一部学界の先覚の賛同を得て『心霊科学研究会』を東京に創立したのは大正十二年の春であります。それが間もなくかの大震火災の見舞う所となり、その結果一時実行部を大阪に移し、機関として雑誌『心霊界』を刊行しつつありますが、心霊の研究は一の刊行物丈でははなはだ不充分であります。 うしてもここ実験を中心とせる一機関の設立を必要と致します。これはうに実行すべきであって、事情これを許さず、今日 まで隠忍して居た次第でありますが、去る七月下旬、大阪にまでける熱心なる同志の会合となり、幾多の準備的径路けいろ辿たどった後、今回ようやく不完全ながらも『心霊倶楽部』なる一の組織体を形成するに至りました。これも時運のしからしむる所で、日本国も遅れながら、とも角も世界の心霊運動の仲間入りをすることに相成った次第であります。

 いろいろの状況から考えまして何と言っても二十世紀は霊魂を基礎とせる独立せる精神科学の完成を期すべき時代でありましょう霊魂の実在が確認された今日に於て人類が物質科学のみに立脚せんとすることは甚だしく無理であります物質科学と精神科学――この二つの方面が充分に開拓せられ肉体と精神有形と無形実際と理想との融合調和が遺憾なく発揮せられたあかつきここに初めて真正の文化時代が出現します心霊研究はその大目標に向って進むに当り是非ぜひとも通過せねばならぬ関門でありましょう

 以上で本倶楽部創立の趣旨はほぼ明瞭と存じますが、念のめにその内容を分類的に申上げて大方の御清鑑ごせいかんに預かりいと存じます。

 う迄もなく本会の真先まっさきの仕事は

(一)心霊作用の実地研究

であります。百聞は一見に如かずの譬の通り、百の巧妙なる理窟りくつもしばしば一の正確なる実験に劣ります。既に実験を行う以上何は措いても霊的能力者の糾合養成が先決問題であります。私は最近約十年にわたりてそれにばかり没頭して居りますが、近頃に至りていささかその目標がついて参りました。無論霊能者は全国に撤布せられ、ことごとこれを一堂に集めるということは今の所では不可能でありますが、しかしほぼ連絡の途は講ぜられつつあります。それで日課としては大阪を中心とせる数人の霊能者体験者に依嘱して本部において曲りなりにも毎日実験を執行し得ることになりました。お機会を見て臨時に優秀なる能力者の参加を願うことにしてあります。くして各種各様の霊能者に接しますれば、従来単に迷信とし、詐術とし、暗示とし、潜在意識の発露として気休めを言うに止まって居た幾多の非常現象のあるものが正確なる心霊作用の発露であることが明瞭になるのであります。更に進んでは生死問題、死後の生命問題等の諸問題を解決して真信仰の樹立というところまで到達することになるかと存じます。私どもはあくまで巌正なる実験と精到なる推理によりて一歩一歩着実にこの大目的を貫徹して行きたいのでありますが、恐らくこの一事は大方の識者先覚の士のことごとく御賛同くださることだろうと確信します。

 この心霊作用の実地研究に随伴して必然的に起り来る所の研究事項は

(二)心霊作用の実地応用

であらねばならぬと存じます。心霊作用の真相が判明するに連れ誰しも心霊作用が直接間接に人生に対していかなる価値を有するか――この疑問を解明すべく努力せぬものはないでありましょう。従来 不窮理ふきゅうりなる霊智霊能の活用が活社会活人生に対していかに大悪毒を流したかは古今東西の歴史の証明する所で、現にわたくしどももこの点に就きていかに惨憺たる苦楚くそめたか測り知べからざるものがあります。本会としてはこのさい極めて冷静慎重なる態度を以て本問題の解決の重任に当り、心霊界と常識界との一致点、契合点の発見につとめ、独り純学術上の問題としてのみならず、進んでは国家、社会人生の実際問題の解決に向ってもできる丈の貢献を為すべく最善の努力を払わねばならぬと存じます。

 既に本会の研究事項が右に述ぶるが如きものである以上、その最終の大眼目は、所謂いわゆる心霊研究のめの心霊研究にあらずして、個人的には

(三)精神の修養人格の養成

であり、又社会的には

(四)理想的文化時代の完成

にあることは申すまでもありますまい。現在世間で個人主義といい、家族主義といい、国家主義といい、社会主義といい、又は世界同胞主義といい、互に相争うの観があるのははなはだしき短見でありましょう。個人を いて家族はなく、家族をいて国家はなく、国家をいて社会は存在しませぬ。物質観に捕わるれば各自の間に千里の懸隔を生じますが、精神的に考うれば万枝皆一本に帰着します。この物質と精神有形と無形との全然裏表相反せる二元の間に完全なる橋梁を架し霊肉一致顕幽一如の働きを完成せしむるものはたしかにしきあやしき霊魂の作用に相違ないのでありますあくまで正しき実験と正しき推理とにより、科学的にこれを帰納し、立証せんとする本会の事業は困難といえば困難でありますが、ひるがって考うれば天下これほど有意義なる仕事が何所に存在しましょう。

 私どもはここに謹んで大方諸賢の健全を祝し、同時にこの大事業に向って極力賛同の意を表せられんことを希望して止みませぬ。

 因みに本倶楽部部はきの心霊研究同志会を改造拡張せるもので新規則並に日課表等は別に発表致します。

大阪市東区平野町五ノ四

大正十三年十一月二日          心霊倶楽部


底本: 雑誌 「心霊界第一巻第十一号」

無記名記事につき著者不明

発行: 1923(大正13)年12月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

 

※ 入力:いさお      2007年2月3日

※ 公開:新かな版     2007年2月22日


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