心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊界・第一巻

日本固有の心霊現象 (一)

――御嶽行者品川守道氏の霊術実験――

浅野 和三郎

はしがき

 かねての御約束はあるし、又会員並に読者諸氏の熱烈なる督促もありますので、今回いよいよ奮発ふんぱつして日本に於ける心霊現象の実験記事に筆を染むることとし、取り敢えず御嶽行者の霊術に就きて私が実地見聞したところを報告いたします。

 が、それにつきては、前以まえもってて読者諸氏の御諒解を得て置かねばならぬことがあります。他でもないそれは日本の心霊現象と、欧米の心霊現象とがずその出発点においすこぶおもむきを異にして居ることです。

 一、欧米の心霊現象の多くは自身独立せる純心霊現象でありますが日本のは多くの場合に於てある信仰と結びついて居り信仰ヌキの霊術というものは殆んど見当りません

 二、欧米の霊術家達は学者立合いの上の実験室内に於ける実験に応じますが日本の霊術家達は多くはこれを悦ばず実験の時日場所手段並に立合人物までも先方で指定したがる傾向を有して居ります

 この必然の結果として日本の霊術実験は実験としての正確味においてははなはだしく遺憾なことが多く何やら素人臭く、混沌不統一、曖昧あいまい模糊もうこの弊を免れません。欧米の心霊学者の平明なる報告に慣れた方には、私の記事を見て一旦は恐らく失望を感ぜらるるでありましょう。

 それなら日本の霊術、日本の心霊現象は、頭からこれを排斥し去ってよいかというに、決してそうばかりも言われない所があります。実験室内に於ける一回や二回の手取てっとり早い実験でその奥の奥まで洞察し、虚実真偽の最後の断案を下してきれいさっぱりらちを明けるということは、研究者としては至極望ましいに相違ないが、此方こちらの注文通りに行かないからつまらないと言ってしまうのは早計であります。ここは矢張り充分の雅量を示し、先方の身にもなって見て、何所までも気永に、何所までもしびれを切らさず、そして他方においては、極度に鋭利なる眼光をもっ朦々もうもうたる雲霧うんむの中から一点の光明をつかむというヤリ方に出ねばならぬと存じます。これは甚だ面倒な仕事ですが、御互おたがいに東洋に生れ、東洋一流の雰囲気内に住んで居る身の上ですから致方いたしかたがありますまい。 そうする事によってのみここに東洋一流の特色ある心霊研究を完成し得るのではありますまいか。心霊研究といえば、直ちに催眠式諸現象、卓子まわし、プランセット等のみを連想するようなことでは、余り国家の名誉とも云われないかも知れません。

 これを要するに私がこれから発表せんとする心霊現象の実験記事をもって最後の解決を与うるもの若くは私自身がすっかり承認したので筆を執ったものと解せられては私も甚だ当惑し又読者諸氏も甚だ失望を感ぜらるることになります私はただ問題を提供しこれに対する解決批判につきてはむしろ大方識者の指教と助力とを仰ぎたいと切望して居るものであります


 

目  次

一、品川沖の黄金仏像


底本: 雑誌 「心霊界第一巻第七号」 

発行: 1923(大正13)年8月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、 黒丸傍点表記を、下線付き強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2006年7月28日

※ 公開:新かな版     2006年9月5日


心霊図書館: 連絡先