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最新の科学と最古の東洋感想

浅野和三郎

一、日本思想界の混乱

 外面的には現在の日本国は東洋の独立国として立派な対面を保持して居ると言い得ますが、内面的にはバラバラに解体し切り、各自その愛好する所に向って自由行動を試むる所の烏合の集団と観るのが適切のようであります。

 日本の思想界が乱れたことは過去においてただ一度ある、外でもないそれは印度インド思想が輸入された時であります。私の観る所によれば印度インドの伝統的思想と日本の伝統的思想との間には、出発の肝要なる一点、むしろ極めて微妙なる思想と感情との契合点けいごうてんおいて、一寸クヒ違った所があるやに考えられますが、それはここで詳説すべきいとまがありません。兎に角印度インド思想の渡来がかつる程度まで本邦の思想界に大波瀾を惹き起したことは事実でありますが、幸い吾々われわれの祖先達はその短を棄ててその長を採り、その弊を抑えてその利を収め、る程度まで両者の調和を計ることに成功しました。儒教の思想だとて、日本思想と一から十までシッくり合致して居るとは申されませぬが、その相違の点はむしろ部分的であり、その伝来が本邦人の思想上に大動揺を来したとは考えられませぬ。

 かかる次第で在来日本の思想界は、大体において首尾一貫、終始不変の伝統脈絡を保持し、もって明治維新の時代まで到着したのであります。所が、その時をもって十九世紀の西洋思想と接触を始め、ここに千古未曾有の思想上の大動揺を惹き起すことになり、その影響は既にすで陸続りくぞくとして社会の表面に出現しつつあります。

 日本の伝統的思想と十九世紀の西洋思想との間には到底両立し難き根本的相違があります。前者が勝つか、後者が勝つか、それとも両方共倒れになるか、――これは独り日本国の死活問題であるばかりでなく、同時に世界人類の存亡のわかるる根本的大問題であります。今にして大至急に比問題に徹底的解決を与うるにあらずんば、近き将来に取りかえしのつかぬ事態を醸成じょうぜいせぬとも限りませぬ。われわれが微力不才を顧みるのいとまなく、率先して探究審査の歩を進めんとして居るのも全くこれがめであります。


二、東西思想の離合

三、唯物思想の行詰

四、電子説と日本思想


底本: 雑誌 「心霊界第一巻第二号」 

発行: 1923(大正13)年3月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2006年5月28日

※ 公開:新かな版     2006年7月3日


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