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鼈の怪異

別府から西方へ約一里はなれた所に周囲一里ばかりの池があります。神霊の池と呼んで昔は殺生禁断であったそうです。その池には非常にすっぽんが多くて時には池一面に浮び出て中には程大きいものも沢山有ります。

明治二十年代の事でした。商売に抜目ない大阪人が池のすっぽんに目を付けて、如才なく村の有力者達の間に運動して、遂にすっぽん全部を二千円で買収して一攫千金いっかくせんきんの計画に取り掛りました。

愈々いよいよ池の水を落し始めて、今晩中には大方池も乾し、明朝には一疋も残らず捕獲しようと、すっかり手筈を運んで置きました。

翌朝大阪人は人夫を大勢れて現場に来ましたが、ウヨウヨ居る筈のすっぽんが一疋も居りません。事の余りに意外なるにさす貪慾どんよくの商人も呆然として無言のままに引取って仕舞いました。

所が水を返して再び池にみなぎらせますと、以前の様にすっぽんが何処からともなく池一杯に群って来たとう事です。


底本: 雑誌 「心霊界第一巻第一号」 

発行: 1923(大正13)年2月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 入力:いさお      2007年3月15日

※ 公開:新かな版     2007年3月15日


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