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会告

心霊科学研究につきて大方先覚諸氏に謹告す

 私どもが本邦に心霊科学研究会の設立を首唱するに至りました動機は極めて単純であります。まり信仰の異同や職業の如何いかんには全然関係なき一の有力なる純学術的研究機関を組織し、諸般の霊的現象又は心霊作用に就きて厳正なる批判討究を遂げたいというのであります。この目的以外には何の野心腹蔵もなく、この目的に添はざる不純分子の混入は絶対に拒絶致したいのであります。この点は何よりきに大方諸彦の御諒解を得て置きたく存じます。

 さて此種このしゅの計画は本邦にては恐らく今回のが最初のものでありましょうが、欧米諸国に於きましては約二十余年前から既にその機運が催し始めました。そうして現在英米仏独其他そのほかにも有力なる心霊科学研究会がそれぞれ設置されて居り、就中なかんずく英国ロンドンには近年霊科大学さえ設立さるるに至りました。そしで世界的定評ある一流の学者達が陸続りくぞくとしてこの方面の開拓に当り学術上充分の価値ある研究が次第に公表されつつありますので、今や心霊学は学問上の一大分科として確実なる地歩を占むるに至りました。勿論むろんこの新学問に対して何等の研究も理解もなく、今尚いまなお十九世紀式唯物説などの旧塁に固着して、漫然これを排斥し去らんとする頑冥な人士も全く跡を絶つに至りませぬが、其等それらは時代錯誤のはなはだしきものとして次第次第に世間から敬遠され、今後の政治宗教法律医学哲学文学等はドーしても心霊学上の研究の結果を取り入れねばならぬという事に一般の思潮が進んでまいりました

 遺憾いかんながら本邦の現在は欧米に比して、すくなくとも十年以上遅れて居ると見做みなさねばなりませぬ。成程なるほど霊術家と称するものが雲霞うんかの如く諸方に崛起くっきし、又霊的現象が都鄙とひ到る処に喧傅けんでんされつつあるは事実であります。しかながら一般学界はこれに対して全然風馬牛ふうばぎゅうであり、未だこれに就きて何等の審査も又何等の整理をも施すに至りませぬ。その結果いたずらに迷信の跋扈ばっことなり又社会人心の動揺となり百弊これに伴いて発生し有司当局もほとんど取締るべき手段方法を知らざる有様に見受けられます。私どもは現日本の精神的危機に処すべき最も有効なる手段はドー考えましても堅実なる心霊科学研究会の設立ではあるまいかと痛感するものであります。

 本会創立後の事業の内容は、それが欧米諸国よりも立ち遅れがして居る丈それ丈、余程よほど多岐多端にわたらねばなりますまい。曰く霊的事実の調査並に記録の作成、曰く心霊作用の実験、曰く霊媒者の保護養成、曰く参考書類の蒐聚しゅうしゅう、曰く研究資料の編纂刊行等、一つ一つ容易ならぬ仕事ばかりであります。ことに日本の心霊科学研究会としては、支那、印度をはじめ、あまね東洋全部に亘る霊界の宝庫を開きて、これを世界に提供すべき道徳的責任があります。かく考えますと、余程よほど人物も資力も充実して居るものでなければ、到底完全にその目的を達する事は困難であります。これ私どもが浅才不識をかえりみるのいとまなく、率先して広く大方先覚の諒解と同情とに訴え、この意義の健全なる発達に向って、熱烈なる援助を懇願する次第であります。

   首唱者(代表)

今村力三郎 豊島與志雄 龜谷 新一 高橋 五郎
中桐確太郎 上野岩太郎 前田 下學 藤本恕一郎
近藤  定 淺野和三郎 北原 種忠 杉山 義雄

   賛成者(順序不同)

法学博士
子爵
田尻稻次郎君 医学博士 三宅 鉱一君
法学博士 江木  衷君 理学博士 松村 任三君
農学博士 玉利 喜造君 理学博士 中井猛之進君
文学士
理学士
本田 親二君 医学博士 杉田 直樹君
理学博士  藤原 咲平君    

底本: 雑誌 「心霊研究」 第一巻

無署名に付き、著者不明。

発行: 1922(大正12)年7月1日 心霊科学研究会

資料協力: 思抱学人

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の黒丸傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

 

※ 入力:いさお      2007年4月24日

※ 公開:新かな版     2007年5月5日


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