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7 大阪に於ける拘留沙汰

2010/10/29

『それは斯うです』と長南さんは物語りを続けました。『大朝の記事が出てからたしか三日目位でした、私の寓居は突然多数の警官に包囲され、家宅捜索を執行されたのでした。折から私は外出中でしたが、家人の談によると、それはなかなか厳密な大捜査で、何か薬品様のものを隠して居はせぬかと言って床下までも捜がしたそうです。――無論いくら捜索されたとて薬品などの有ろう筈がありませんから、警官隊は手を空しゅうしてスゴスゴ引き上げたのでありますが、即夜姉を呼び出して拘留十日に処分しました。

『縦令五日でも十日でも人を拘留処分に附するには、それ相当の理由がなければならぬ筈です。所が私の姉の場合にはいかなる理由があるのか更に私には判らない。姉は何処までも従順で、拘留すると云えば甘んじて拘留され、監禁するといえば歓んで監禁される性質の婦女でしたが、苟くも其監督者の地位に立てる私としてはそうは参りません。遂に私は右の言渡しを不当として正式の裁判を仰ぎ、控訴上告にまで及んだのでした。

『私が一方に於て斯く訴訟問題に気を揉んで居るにも係らず、御当人は至極暢気なもので、八月下旬従者数名を引具し、富士登山に出掛けて了いました。そしてそのまま山上に籠り、九月、十月、十一月と幾度び月が変っても下山しないのには弱りました。神霊の守護を受けて居る以上、其身体についての心配は殆んど無いとしても、裁判の問題は本人なしには進行させる訳に参りません。正式裁判を仰ぎ乍ら、延期又延期では、私の名誉上の問題でもありますから、屡々人を富士山に派し、いろいろ手を尽した上で、十一月の下旬に至り、ヤッとの事で姉を大阪まで連れ戻ることが能き、それで私もほっと安心したような次第でした。』


浅野和三郎著

底本:「心霊文庫第3篇 続幽魂問答(付録 長南年惠物語)」

心霊科学研究会

1930(昭和5)年06月20日発行

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に置き換えました。

※ ルビ付き版はこちらです。


入力: いさお


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小桜姫物語について

「小桜姫物語」の再編集完了。

1、ルビなしのPHP化により携帯電話での表示が可能になり、キーワード検索が容易になりました。
2、HTML版は、従来誤字の修正点が未掲載だったものをバルーンヘルプにて誤字の修正点が解るようにし、底本の状態に近づけました。
3、CSSを変更して、HTMLのルビが、IE以外のブラウザでも表示出来るようにしました。

 今後、他のページも同様に再編集して行きます。

次は「新樹の通信」の再編集を行ないますが、9月1日から9月10日まで、私事多忙につき更新おやすみ。