(2) 心霊現象の種類と霊媒

 説明の順序として私は取り敢えず心霊現象の簡単な分類を試みて置きたいと思います。一と口に心霊現象と申しましても、其種類性質は千変万化容易に捕捉し難きものがありますので、うっかりすると戸惑いをし、偶然自分の接触した現象のみを重要視して、偏った、不徹底な結論を下したがるような弊害に陥り勝ちです。日本をはじめ、欧米にもそうした論者がなかなか尠くありません。私はそれを防ぐべく、とり敢えず、概括的に心霊現象とは一体どんなものかという事を申上げて置きたいと考えるのであります。

 心霊現象を其性質によりて類別を施しますと、結局これを左の二種類に大別することができます。即ち――

  (甲) 物理的心霊現象

  (乙) 超物理的心霊現象

 物理的心霊現象と申しますのは読んで字の如く、ある無形の働きが有形の物質の上に影響を及ぼした場合を指すものであります。従ってこの種の現象は五感の所有者には誰にも判ります。この種に属するもので最も重要なものを列挙すれば――

  (イ) 卓子其他の浮揚発声現象

  (ロ) 心霊写真現象

  (ハ) 物質化現象

  (ニ) 直接談話現象

  (ホ) 物品引寄現象

  (ヘ) 直接書記又は直接作画現象

等であります。

 次ぎに超物理的心霊現象というのは、物理的現象の如く客観的には何等の現象も起らず、ただ特殊的能力者の主観に属する異常現象を指すのであります。その中で最も普通なるは――

  (イ) 霊視現象(透視、千里眼)

  (ロ) 霊言現象

  (ハ) 自動書記現象

等であります。

 以上列挙した諸現象に就きては以下章を追いてできる限り丁寧に講述を試みる予定でありますが、その前に爰で是非とも皆様の御諒解を得て置かねばならぬ事は、すべての心霊現象の背後には必らず霊媒が控えて居ることで、それが物理的現象であろうが、又超物理的現象であろうが、決して例外はありません。

 霊媒という言葉の意義は読んで字の如く物質世界と超物質世界との交通連絡を講ずる中継者ということでありましょう。大体はそれで差支ないと思いますが、しかし霊媒の種類性質はなかなか多種多様で、同時にこれを使用する目的にもしばしば天地の相違が存在しますから、或る一人の霊媒を捕えて霊媒とは斯んなものだという訳に参りません。で、皆様の御参考までにここに霊媒の大ざっぱな類別をも併せ試みることにしましょう。

 第一に挙げねばならぬは

原料供給の物理的霊媒

であります。一体すべての物理的心霊現象というのは、超物質界の居住者(即ち霊魂)ができる丈物質界に歩み寄り、地上の何人にも判るような形式方法で彼我の間に一つの交通を開こうとする、頗る無理なやり方ですから、従って之に使用さるる霊媒の役目も気の毒なほど困難であります。斯うした場合に霊媒の躯は宛かも一の原料品の倉庫見たいな役割を勤めます。霊媒の躯から抽出された原料は一般にエクトプラズム又はテレプラズムと呼ばれ、一種の半物質的流動体で、有形から無形に又無形から有形に自由自在に変形する性質を有っています。霊界の居住者はこのエクトプラズムを原料として、卓子を浮揚させたり、幽霊の物質化を行ったりするので、従って心霊現象が起っている最中に霊媒の体重を計ると通例その目方が減って居ます。しかし現象が済んで了えば抽出された原料は再び霊媒の躯に戻ります。現時欧米諸国に於てこの種の傑出せる霊媒は、ポーランドのクルスキィ、イギリスのホープ、及びルーイス、ボストンのクランドン夫人(マアジャリイ)ニューヨルクのバリアンタイン、伊太利のスコット侯爵等であります。日本ではこの種の霊媒として現在ではただ一人龜井三郎氏を挙げることができます。

 この次ぎに挙ぐべきは

  没我的の巫女型霊媒

で、これは普通霊媒自身の人間意識を断滅し、言わば脱殻同然の躯を他の霊魂に貸与し、その道具になって働くもので、一と口に言ったら詰まり一の活きた機械の役目をするのであります。人間個性の一時的棄権――随分思い切った大犠牲であります、現代この種の霊媒として世界に傑出して居るのはイギリスのレナルド夫人でしょう。日本では中西りか女史などがこの種の霊媒の好典型であります。

 次ぎに挙ぐべきは

  感応式の霊媒

であります。第二に挙げた巫女型の霊媒の働きは寧ろ機械的で、さして敏感性に富めりとも謂われませぬが、感応式の霊媒は寧ろ自己の敏感性を利用して他界から放送さるる波動を受取ると言ったような趣を具えて居ります。従って前者が大抵無意識の入神状態に陥るに反し、後者は自我意識をそのままに保存し、ただ自分自身を受身ッシィヴの状態に置くだけであります。この種の霊媒の感受性は種々の方面に現われます。視覚的に働くものは所謂霊視能力であり、世人の所謂天眼通、千里眼、透視などは皆これに属します。筆写的に働くものは所謂自動書記能力であり声音的に働くものは所謂霊言能力であり、聴覚的に働くものは所謂霊聴能力エア エディエンスであり、その他まだいろいろの形式がありますが、詳しい事は拙著『心霊講座』に譲ります。現在世界でこの種の霊媒として有名なのは、イギリスのドウソン・スコット女史、ワアド氏、トラヴァース・スミス夫人、北米のロージャース夫人などであると思います。日本では霊視能力の代表者として大阪工業大学の中尾良智氏を挙ぐべきでしょう。その他にも見込のある能力者が現われつつありますから、数年後には日本も或は欧米に対して遜色なきに至るかも知れません。又是非そうあらせたいと期待して居ります。

 まだ述べたい事は沢山ありますが、心霊現象の種類性質、又心霊現象の背後に控えて働く所の霊媒のどんなものかは、これで一と通りお解りになったことと考えますので早速それぞれの心霊現象の講述に移ります。


底本:「心霊文庫第一篇 心霊研究之栞」 

著者: 浅野和三郎

発行:心霊科学研究会

1930(昭和5)年06月10日初版

1936(昭和11)年11月1日5版

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ PHPファイル化に際して、底本のルビを取り除き、底本中のゴシック表記を斜線表記、傍点表記を下線表記に、白丸傍点表記を強調表記に置き換えました。

※ ルビ付き版はこちらです。


資料提供: 思抱学人

入力: いさお

2008年5月20日公開


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「小桜姫物語」の再編集完了。

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次は「新樹の通信」の再編集を行ないますが、9月1日から9月10日まで、私事多忙につき更新おやすみ。