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47、龍神の受持

2010/08/01

 いかに訊ねても訊ねても、龍神の生活は何やら薄い幕を隔てたようで、シックリとは腑に落ちない個所がございます。相当長い間こちらの世界に住んで居る私達ですらそう感ずるのでございますから、現世の方々としては尚更のことで、容易に龍神の存在が信じられない筈だとお察しすることができます。――と申して龍神さんの物語を握りつぶせば、私として虚欺の通信を送ることになり、それも気がとがめてなりませぬ。で、皆さまの信ずる、信じないはしばらく別として、もう少し私がその時監督のお爺さんからきかされたところを物語らせていただきます。――

問 『龍神さんのお仕事というのは大体どんなものでございますか?』

答 『龍神の受持はなかなか大きく、広く、そして複雑で、とてもそのすべてを語りつくすことはできぬ。ごく大まかに言ったら、人間の世界で天然現象と称えて居るものは、悉く龍神の受持であると思えばよいであろう。すべて龍神には龍神としての神聖な任務があり、それが直接人間界の利益になろうが、なるまいが、どうあっても遂行せねばならぬことになっている。風雨、寒暑、五穀の豊凶、ありとあらゆる天変地異……それ等の根抵には悉く龍神界の気息がかかって居るのじゃ……。』

問 『産土神その他の御祭神は皆龍神様でございますか?』

答 『奥の方は何れも龍神で固めてある……。』

問 『外国にも産土はあるのでございますか?』

答 『無論外国にもある。ただ外国には産土の社がないまでのことじゃ。産土の神があって、生死、疾病、諸種の災難等の守護に当ってくれればこそ、地上の人間は初めてその日その日の生活が営めるのじゃ。』

問 『各神社には龍神様の外にもいろいろ眷族があるのでございますか?』

答 『むろん沢山の眷族がある。人霊、天狗、動物霊……必要に応じていろいろ揃えてある……。』

問 『産土神は皆男の神様でございますか?』

答 『産土の主宰神は悉く男性に限るようじゃ。しかし幼児の保姆などにはよく女性の人霊が使われるようで……。』

問 『仏教の信者などは死後何うなるのでございますか?』

答 『いかなる教を信じても産土の神の司配を受けることに変りはないが、ただ仏の救いを信じ切って居るものは、その迷夢の覚めるまで、しばらく仏教の僧侶などに監督を任せることもある。――イヤしかしそなたの質問は大分俺の領分外の事柄に亘って来た。産土のことなら、俺よりもそなたの指導役の方が詳しいであろう。俺には成るべく龍神の修行場のことだけ訊いてもらいたいのじゃが……。』

問 『ツイいろいろの事をお訊ねして相済まぬことでございました。実は平生指導役のお爺様からも、いろいろ承って居るのでございまするが、何やら腑に落ちかねるところもありますので、丁度良い折と考えて念を押して見たような次第で……。』

答 『それも悪いとは申さぬが、しかし一升の桝には一升の分量しか入らぬ道理で、そなたの器量が大きくならぬ限り、いかにあせってもすべてが腑に落ちるという訳には参らぬ。今日はしばらくこの辺でとどめて置いては何うじゃナ?』

問 『又とないよい機会でございますから、最う一つ二つ訊ねさせていただき度うございます。――――あの弁財天と申上げるのは、あれは皆女性の龍神様でございますか?』

答 『その通り……。神に祀られている以上、何れも皆立派に修行の積める女神ばかりで、土地の守護もなされば、又人間の願事も、それが正しいことであれば、歓んで協えてくださる……。』

問 『水天宮と申すのも矢張り……。』

答 『あれは海上を守護される龍神……。』

問 『最後にもう一つ伺わせて戴きます。あなた様はどんなお身分の御方で……。』

答 『俺か……俺は妻もなく、又子もなく永久に独身の老いたる龍神じゃ……。龍神の中には斯う言った変り者も時としてないではない。現にそなたの指導役の老人なども矢張り俺のお仲間じゃ。――どりャ一応修行場の見廻りをすると致そう。今日はこれまで……。』

 言いも終らずこの白衣の老人の姿はスーッと湖水の底に幻のように消えて行きました。


底本:「霊界通信 小桜姫物語」 潮文社

1998(平成10)年07月31日第九刷発行
底本の親本は心霊科学研究会出版部
1937(昭和12)年02月発行

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に置き換えました。

※ 底本で使われている「面区点2-12-11 (U+2231E)」]の文字は、辞書によっては異体字として扱われていない「廻」で置き換えています。

※ PHP化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、斜字に置き換えました。また、底本中のルビは割愛しました。

※ ルビ付き版はこちらです。


入力者: 泉美

かな修正: いさお


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小桜姫物語について

「小桜姫物語」の再編集完了。

1、ルビなしのPHP化により携帯電話での表示が可能になり、キーワード検索が容易になりました。
2、HTML版は、従来誤字の修正点が未掲載だったものをバルーンヘルプにて誤字の修正点が解るようにし、底本の状態に近づけました。
3、CSSを変更して、HTMLのルビが、IE以外のブラウザでも表示出来るようにしました。

 今後、他のページも同様に再編集して行きます。

次は「新樹の通信」の再編集を行ないますが、9月1日から9月10日まで、私事多忙につき更新おやすみ。