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26、良人との再会

2010/07/11

 前回の龍宮行のお話は何となく自分にも気乗りがいたしましたが、今度はドーも億劫で、気おくれがして、成ろうことなら御免を蒙りたいように感じられてなりませぬ。帰幽後生前の良人との初対面の物語……婦女の身にとりて、これほどの難題はめったにありませぬ。さればとて、それが話の順序であれば、無理に省いて仕舞う訳にもまいりませず、本当に困って居るのでございまして……。ナニ成るべく詳しく有りのままを話せと仰っしゃるか。そんなことを申されると、尚更談話がし難くなって了います。修行未熟な、若い夫婦の幽界に於ける初めての会合――とても他人さまに吹聴するほど立派なものでないに決って居ります。おきき苦しい点は成るべく発表なさらぬようくれぐれもお依みして置きます……。

 いつかも申上げた通り、私がこちらの世界へ参りましたのは、良人よりも一年余り遅れて居りました。後で伺いますと、私が死んだことはすぐ良人の許に通知があったそうでございますが、何分当時良人はきびしい修行の真最中なので、自分の妻が死んだとて、とてもすぐ逢いに行くというような、そんな女々しい気分にはなれなかったそうでございます。私は又私で、何より案じられるのは現世に残して置いた両親のことばかり、それに心を奪われて、自分よりも先へ死んで了っている良人のことなどはそれほど気にかからないのでした。『時節が来たら何れ良人にも逢えるであろう……。』そんな風にあっさり考えていたのでした。

 右のような次第で、帰幽後随分永い間、私達夫婦は分れ分れになったきりでございました。むろん、これがすべての男女に共通のことなのか何うかは存じませぬ。これはただ私達がそうであったと申す丈のことで……。

 そうする中に私は岩屋の修行場から、山の修行場に進み、やがて龍宮界の訪問も済んだ頃になりますと、私のような執着の強い婦女にも、幾分安心ができて来たらしいのが自覚されるようになりました。すると、こちらからは別に何ともお願いした訳でも何でもないのに、ある日突然神様から良人に逢わせてやると仰せられたのでございます。『そろそろ逢ってもよいであろう。汝の良人は汝よりもモー少し心の落付きができて来たようじゃ……。』指導役のお爺さんが、いとどまじめくさってそんなことを言われるので、私は気まりが悪くて仕方がなく、覚えず顔を真紅に染めて、一たんはお断りしました。――

『そんなことはいつでも宜しうございます。修行の後戻りがすると大変でございますから……。』

『イヤイヤ一度は逢わせることに、先方の指導霊とも手筈をきめて置いてある。良人と逢った位のことで、すぐ後戻りするような修行なら、まだとても本物とは言われぬ。斯んなことをするのも、矢張り修行の一つじゃ。神として無理にはすすめぬから、有りのままに答えるがよい。何うじゃ逢って見る気はないか?』

『それでは、宜しきようにお願いいたしまする……。』

 とうとう私はお爺さんにそう御返答をして了いました。


底本:「霊界通信 小桜姫物語」 潮文社

1998(平成10)年07月31日第九刷発行
底本の親本は心霊科学研究会出版部
1937(昭和12)年02月発行

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に置き換えました。

※ 底本で使われている「面区点2-12-11 (U+2231E)」]の文字は、辞書によっては異体字として扱われていない「廻」で置き換えています。

※ PHP化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、斜字に置き換えました。また、底本中のルビは割愛しました。

※ ルビ付き版はこちらです。


入力者: 泉美

かな修正: いさお


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小桜姫物語について

「小桜姫物語」の再編集完了。

1、ルビなしのPHP化により携帯電話での表示が可能になり、キーワード検索が容易になりました。
2、HTML版は、従来誤字の修正点が未掲載だったものをバルーンヘルプにて誤字の修正点が解るようにし、底本の状態に近づけました。
3、CSSを変更して、HTMLのルビが、IE以外のブラウザでも表示出来るようにしました。

 今後、他のページも同様に再編集して行きます。

次は「新樹の通信」の再編集を行ないますが、9月1日から9月10日まで、私事多忙につき更新おやすみ。