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19、龍神の祠

2010/07/04

 順序として、これからポツポツ龍宮界のお話を致さねばならなくなりましたが、もともと口の拙ない私が、私よりももっと口の拙ない女の口を使って通信を致すのでございますから、さぞすべてがつまらなく、一向に多愛のない夢物語になって了いそうで、それが何より気がかりでございます。と申して、この話を省いて了えば私の幽界生活の記録に大きな孔が開くことになって筋道が立たなくなるおそれがございます。まあ致方がございませぬ、せいぜい気をつけて、私の実地に観たまま、感じたままをそっくり申上げることに致しましょう。

 ここでちょっと申添えて置きたいのは、私の修行場の右手の山の半腹に在る、あの小さい龍神の祠のことでございます。私は龍宮行をする前に、所中そのお祠へ参拝したのでございますが、それがつまり私に取りて龍宮行の準備だったのでございました。私はそこで乙姫様からいろいろと有難い教訓やら、お指図やら、又おやさしい慰めのお言葉やらを戴きました。お蔭で私は自分でも気がつくほどめきめきと元気が出てまいりました。『その様子なら汝も近い内に乙姫様のお目通りができそうじゃ……。』指導役のお爺さんもそんなことを言って私を励ましてくださいました。

 ここで私が龍神様のお祠へ行って、いろいろお指図を受けたなどと申しますと、現世の方々の中には何やら異様にお考えになられる者がないとも限りませぬが、それは現世の方々が、まだ神社というものの性質をよく御存じない為めかと存じます。お宮というものは、あれはただお賽銭を上げて、拍手を打って、首を下げて引きさがる為めに出来ている飾物ではないようでございます。赤心籠めて一生懸命に祈願をすれば、それが直ちに神様の御胸に通じ、同時に神様からもこれに対するお応答が降り、時とすればありありとそのお姿までも拝ませて戴けるのでございます……。つまり、すべては魂と魂の交通を狙ったもので、こればかりは実に何ともいえぬほど巧い仕組になって居るのでございます。私が山の修行場に居りながら、何うやら龍宮界の模様が少しづつ判りかけたのも、全くこの難有い神社参拝の賜でございました。もちろん地上の人間は肉体という厄介なものに包まれて居りますから、いかに神社の前で精神の統一をなされても、そう容易に神様との交通はできますまいが、私どものように、肉体を棄ててこちらの世界へ引越したものになりますと、殆んどすべての仕事はこの仕掛のみによりて行われるのでございます。ナニ人間の世界にも近頃電話だの、ラジオだのという、重宝な機械が発明されたと仰っしゃるか……それは大へん結構なことでございます。しかしそれなら尚更私の申上げる事がよくお判りの筈で、神社の装置もラジオとやらの装置も、理窟は大体似たものかも知れぬ……。

 まあ大へんつまらぬ事を申上げて了いました。では早速これから龍宮行の模様をお話しさせて戴きます……。


底本:「霊界通信 小桜姫物語」 潮文社

1998(平成10)年07月31日第九刷発行
底本の親本は心霊科学研究会出版部
1937(昭和12)年02月発行

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に置き換えました。

※ 底本で使われている「面区点2-12-11 (U+2231E)」]の文字は、辞書によっては異体字として扱われていない「廻」で置き換えています。

※ PHP化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、斜字に置き換えました。また、底本中のルビは割愛しました。

※ ルビ付き版はこちらです。


入力者: 泉美

かな修正: いさお


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小桜姫物語について

「小桜姫物語」の再編集完了。

1、ルビなしのPHP化により携帯電話での表示が可能になり、キーワード検索が容易になりました。
2、HTML版は、従来誤字の修正点が未掲載だったものをバルーンヘルプにて誤字の修正点が解るようにし、底本の状態に近づけました。
3、CSSを変更して、HTMLのルビが、IE以外のブラウザでも表示出来るようにしました。

 今後、他のページも同様に再編集して行きます。

次は「新樹の通信」の再編集を行ないますが、9月1日から9月10日まで、私事多忙につき更新おやすみ。