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14、守護霊との対面

2010/06/29

 第一期の修行中に経験した、重なる事柄につきては、以上で大体申上げたつもりでございますが、ただもう一つここで是非とも言い添えて置かねばならないと思いますのは私の守護霊の事でございます。誰にも一人の守護霊が附いて居ることは、心霊に志す方々の御承知の通りでございますが、私にも勿論一人の守護霊が附いて居り、そしてその守護霊との関係はただ現世のみに限らず、肉体の死後も引きつづいて、切っても切れぬ因縁の絆で結ばれて居るのでございます。もっとも、そうした事柄がはっきり判りましたのはよほど後の事で、帰幽当時の私などは、自分に守護霊などと申すものが有るか、無いかさえも全然知らなかったのでございます。で、私がこちらの世界で初めて自分の守護霊にお目にかかった時は、少なからず意外に感じまして、従ってその時の印象は今でもはっきりと頭脳に刻まれて居ります。

 ある日私が御神前で、例の通り深い精神統一の状態に入って居た時でございます、意外にも一人の小柄の女性がすぐ眼の前に現われ、いかにも優さしく、私を見てにっこりと微笑まれるのです。打見る所、年齢は二十歳余り、顔は丸顔の方で、緻致はさしてよいとも言われませぬが、何所となく品位が備わり、雪なす富士額にくっきりと黛が描かれて居ります。服装は私の時代よりはやや古く、太い紐でかがった、広袖の白衣を纏い、そして下に緋の袴を穿いて居るところは、何う見ても御所に宮仕えして居る方のように窺われました。

 意外なのは、この時初めてお目に懸ったばかりの、全然未知のお方なのにも係らず、私の胸に何ともいえぬ親しみの念がむくむくと湧いて出たことで……。それにその表情、物ごしがいかにも不思議……先方は丸顔、私は細面、先方は小柄、私は大柄、外形はさまで共通の個所がないにも係らず、何所とも知れず二人の間に大変似たところがあるのです。つまりは外面はあまり似ないくせに、底の方でよく似て居ると言った、よほど不思議な似方なのでございます。

『あの、どなた様でございますか……。』

 漸く心を落つけて私の方から訊ねました。すると先方は不相変にこやかに――

『あなたは何も知らずに居られたでしょうが、実は自分はあなたの守護霊……あなたの一身上の事柄は何も彼も良う存じて居るものなのです。時節が来ぬ為めに、これまで蔭に控えて居ましたが、これからは何事も話相手になって上げます。』

 私は嬉しいやら、恋しいやら、又不思議やら、何が何やらよくは判らぬ複雑な感情でその時初めて自分の魂の親の前に自身を投げ出したのでした。それは丁度、幼い時から別れ別れになっていた母と子が、不図どこかでめぐり合った場合に似通ったところがあるかも知れませぬ。何れにしてもこの一事は私にとりてまことに意外な、又まことに意義のある貴い経験でございました。

 激しい昂奮から冷めた私は、もちろん私の守護霊に向っていろいろと質問の矢を放ち、それでも尚お腑に落ちぬ個所があれば、指導役のお爺様にも根掘り葉掘り問いつめました。お蔭で私の守護霊の素性はもとより、人間と守護霊の関係、その他に就きて大凡の事が漸く会得されるようになりました。――あの、それを残らず爰で物語れと仰っしゃるか……宜しゅうございます。何も御道の為めとあれば、私の存じて居る限りは逐一申上げて了いましょう。話が少し堅うございまして、何やら青表紙臭くなるかも存じませぬが、それは何卒大目に見逃がして戴きます。又私の申上げることにどんな誤謬があるかも計りかねますので、そこはくれぐれもただ一つの参考にとどめて戴きたいのでございます。私はただ神様やら守護霊様からきかされたところをお取次ぎするのですから、これが誤謬のないものだとは決して言い張るつもりはございませぬ……。


底本:「霊界通信 小桜姫物語」 潮文社

1998(平成10)年07月31日第九刷発行
底本の親本は心霊科学研究会出版部
1937(昭和12)年02月発行

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に置き換えました。

※ 底本で使われている「面区点2-12-11 (U+2231E)」]の文字は、辞書によっては異体字として扱われていない「廻」で置き換えています。

※ PHP化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、斜字に置き換えました。また、底本中のルビは割愛しました。

※ ルビ付き版はこちらです。


入力者: 泉美

かな修正: いさお


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小桜姫物語について

「小桜姫物語」の再編集完了。

1、ルビなしのPHP化により携帯電話での表示が可能になり、キーワード検索が容易になりました。
2、HTML版は、従来誤字の修正点が未掲載だったものをバルーンヘルプにて誤字の修正点が解るようにし、底本の状態に近づけました。
3、CSSを変更して、HTMLのルビが、IE以外のブラウザでも表示出来るようにしました。

 今後、他のページも同様に再編集して行きます。

次は「新樹の通信」の再編集を行ないますが、9月1日から9月10日まで、私事多忙につき更新おやすみ。